イベルメクチン外用薬の研究が酒さにおいての腸内菌共生バランス失調を解明
最近開催された欧州皮膚科学会・性病学会(the recent European Academy of Dermatology and Venereology, EADV)2023年大会で発表された報告書によると、イベルメクチン局所薬には顕著な臨床効果があり、酒さを患う人の皮膚に見られるニキビダニの密度を減少させます。しかし、皮膚のの異常は依然として残るようです。
「これは、宿主の皮膚のマイクロバイオーム(微生物叢)が酒さの免疫病因において二次的な役割を果たしていることを示す最初のヒントとなります。」
とドイツのデュッセルドルフ大学病院皮膚科部長のバーナード・ホーミー博士は述ベました。
「酒さに関しては、ストレスや紫外線、暑さ、寒さ、食べ物、アルコールなどの誘発因子がよくわかっています。」と彼は言います。
「毛包脂腺部でニキビダニが増加していることも良く知られています。」
過去10年間にわたる研究では、病気の過程における皮膚マイクロバイオームの潜在的な役割についても検討が始められていますが、その答えは依然として「ほとんどとらえどころがない」ままであるとホーミー博士は述べました。
イベルメクチンは効果がありますがどのように作用するのでしょうか。
イベルメクチン 1% クリーム (商品名:Soolantra) は、酒さの特徴である炎症性病変の治療薬として 2014 年から米国食品医薬品局によって承認されていますが、その作用機序は明らかではありません。
ホーミー博士は、酒さ患者への治療においてイベルメクチンがどのように作用するのかを調べ、患者の皮膚マイクロバイオームやトランスクリプトームと何らかの関連があるかどうかを調査することを目的とした61人の被験者で行った試験の結果を発表しました。
この試験には丘疹膿疱性酒さを患う41名と酒さがない20名が参加しました。
すべての患者に対して、シアノアクリレート接着剤を使用して、30 日おきに 2 回皮膚表面生検を実施しました。
酒さの患者は、生検と生検の間にイベルメクチン局所薬 1% で治療が行われました。
研究前日と30日目に採取した皮膚サンプルを顕微鏡で検査し、皮膚のニキビダニの数(ダニ/㎠)と皮膚マイクロバイオームのRNA配列決定を行いました。
酒さ患者の平均年齢は54.9歳で、治療前後の平均ニキビダニ数はそれぞれ7.2㎠と0.9㎠でした。
酒さの重症度を評価するために研究者の一般評価を使用して、ホーミー博士は、酒さ患者の 43.9% で 30 日目にスコアが減少し、改善が示されたと報告しました。
さらに、イベルメクチンを局所投与することで、ダニがいると特定された患者の 87.5% (n = 24) でニキビダニ密度に顕著な減少、または、完全な消滅が見られました。
皮膚微生物叢の変化が見られる
品質管理の一形態として、「16S rRNA シーケンス」を使用して、患者間の皮膚マイクロバイオームの変化を対照患者と比較しました。
「酒さ患者の炎症性病変の皮膚ニッチ内で我々が発見した分類群は、健康なボランティアとは大きく異なります。」
とホーミー博士は述べました。
キューティバクテリウム種は、対照者である健康な人には優勢であるものの、酒さの患者において炎症がある場合には存在しません。
その代わりに、ブドウ球菌属が「アトピー性皮膚炎と同様に適した場所を引き継いでいます。」
と同氏は指摘しました。
イベルメクチンによる治療が微生物にどのような影響を与えるかを調べると、酒さの患者に見られる「C アクネ」の減少は治療が行われても持続し、S表皮細胞、Sホミニス細胞、Sカピティス細胞の量はさらに増加しました。
これは、アクネ菌の防御的または恒常性維持の役割の可能性を示しているのではなく、ブドウ球菌の病原性の役割がある可能性を示唆するものだとホーミー博士は説明しました。
「驚くべきことに、炎症性病変は減少し、患者の症状は良くなりますが、イベルメクチンの局所薬での治療中に皮膚のマイクロバイオームは恒常性状態には戻りません。」
もちろん個人差はあります。
ホーミー博士はまた、ニキビダニの腸内に生息していると考えられている微生物である「スノッドグラッセラ・アルヴィ(Snodgrassella alvi)」が、イベルメクチン治療前には酒さ患者の皮膚マイクロバイオームで確認されましたが、治療後には見つからなかったと報告されました。
これは、この微生物が酒さ患者の炎症を部分的に引き起こしている可能性があることを意味している可能性があります。
ホーミー博士は、患者の記録を観察すると、ニキビダニにとってより好ましい条件をもたらす可能性のある別の遺伝子の下方制御があったと述べました。
さらに、「インターロイキン 17 経路」の上方制御が不十分であることが、皮膚のバリア欠陥や代謝の変化と連携して、表皮ブドウ球菌による定着への「道を開く」可能性があります。
ホーミー博士とその関係者らは要約の中で、この発見は「酒さの病変が微生物叢の異常と関連していることを裏付けている。」と結論付けています。
イベルメクチンによる治療は皮膚のマイクロバイオームを正常化しませんでしたが、ニキビダニ密度の減少とニキビダニに関連する微生物の減少と関連していました。
イベルメクチンによる治療は皮膚のマイクロバイオームは正常化しませんでしたが、ニキビダニ密度の減少と、ニキビダニに関連する微生物の減少に関連していました。
このデータが発表された、最新ニュースセッションの共同議長を務めたポルトガルのコインブラ大学皮膚科教授であるマルガリダ・ゴンサロ医学博士は、質問として、酒さ病変の皮膚を健康な対照サンプルと比較するよりも、酒さ患者の健康な皮膚と、罹患した皮膚を比較したのかどうかについて尋ねました。
「いいえ、私たちはそれは行いませんでした。方法論的に少し難しいからです。」
とホーミー博士は回答しました。
また、スイスのローザンヌにあるCHUV大学病院皮膚科部長のミシェル・ジリエ博士もこのセッションの共同議長を務めました。
同氏は次のようにコメントしています。
「これらのデータは、ニキビダニと皮膚微生物叢および酒さのマイクロバイオームの異常との間に密接な関係があることを示唆しています。」
ジリエ博士は、次のように付け加えています。
「酒さでは全体的なマイクロバイオーム異常が起こっており、おそらくこれらの細菌にのみ依存しているのでしょう。」
「概念実証」研究として、ニキビダニを枯渇させるとスノッドグラッセラ・アルヴィも除去されるかどうかを調べることは「非常に興味深い」とジリエ博士は述べました。
【以下のリンクより引用】
Topical Ivermectin Study Sheds Light on Dysbiosis in Rosacea
当社関連商品カテゴリー:皮膚/外皮用薬