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がん患者の運動には効果があるか

運動は不思議な薬です。これは奇跡の治療法、万能薬といえるでしょう。
もしこれが薬だったら、医者は嬉々と処方することでしょう。
私はこのことを何度も知名度の高いテレビの解説者から聞いたことがあります。
問題はそれが本当ではないということです。

フィクションから事実を紐解くには、大分道を遡る必要があります。
プラトンは、運動が健康に良いことを知っており、次のように述べています。

「活動の欠如は人様々な健康状態の悪化につながるが、運動や順序だてたエクササイズを行うことでで予防できる。」

当時、臨床試験などの手がかりは一切ありませんでした。
では彼はどのようにしてこの結論に至ったのでしょうか?
もちろん、身体的により活動でいることで健康に良い影響を与えることを知るのは、難しいことではありません。

誰もが皆、人生で一度は定期的に運動していた時期があったでしょう。
その時は、自分自身に対する満足感を感じていたはずです。

同時に、運動によってもたらされたあらゆる有益な生理学的変化に関して良く理解できていなかったのではないでしょうか。
血管機能や心機能の改善、神経機能の強化、血糖値などの代謝コントロールの向上、脂肪代謝の改善、脂肪の低下、骨の強化などです。
それではなぜ、運動は奇跡の治療薬とならないのでしょうか?

まず心血管疾患からです。
これには、診断後の運動は効果的であるという数多くの証拠が存在します。
もしあなたが身体的に活発であれば、例えば心臓リハビリテーションなどの実施により、この疾患により死亡するリスクを約25%減らすことができます。
これは十分に有益ですが、奇跡の治療とはいえません。

この心血管疾患に関連した25%の生存率上昇は、特定の治療法や治療結果を調査するための無作為化対照試験により得られました。
無作為化試験は最も信頼のおける証拠を示すため、この事実は重要です。
「運動でがんの進行を止めたり、進行速度を遅らせることができるのか?」という質問に関しては、まだ答えが出ていません。

しかし、こうしたデータを集め始める努力が行われています。
私は現在イギリスで、運動が限局性前立腺がんの男性に対する新たな一次治療となり得るかどうかを調査する研究を主導しています。

この男性は元々観察(積極的な治療なし)と呼ばれるものを受けていたため、治療介入が適切か否かを判断するのに適した対象であるようです。

私たちは被験者の男性に、週に2時間半の運動を行うように依頼しました。この運動は心拍数モニターを用いた監督下で行われ、全てを追跡することで、運動により何かしらの有益な作用があるとしたら、何がその反応を引き起こすのかを確認しようと試みました。
(影響を探すのではなく、何かしらの影響があるか否かを確実にテストすることが重要なのです)

一方で、この無作為化試験により、有酸素運動とレジスタンス運動を組み合わせた運動トレーニングを行うことで、がん患者の生活の質を改善し、がん特融の疲労を軽減し、機能的能力を高めることができるという良い証拠を報告てきれば良いと考えています。

これは「生存期間の延長」程魅力的に聞こえないかもしれませんが、あなたが末期がんを患い化学療法と手術の恐ろしい体験に苦しんでいるとしたら、あなたの生活の質を改善できることは大変意味のあることです。

10年前、がん患者に対する一般的な考え方は「安静が最善」であるというものでしたが、これは今では誤りであることが知られています。

しかし、特定の運動力による有益な影響を実証するには、時間が必要です。
私たちの試験は現在「段階II」にあり、この先さらに数年かかります。
しかし、これが完了すれば質の高い証拠が手に入ります。結果がどうであれ、何かしらの発表を行うこととなるでしょう。

この記事を執筆したリアム・バーク博士は、イギリスにあるシェフィールドハラム大学の主席研究員です。

出典:2017年3月17日更新 Health Spectator UK 『Does exercise help if you have cancer? Here’s what we know』(2019年5月3日に利用)
https://health.spectator.co.uk/does-exercise-help-if-you-have-cancer-heres-what-we-know/