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新しいMRIスキャンで、うつ病患者の脳の特徴が明らかに

最先端の脳スキャンにより、うつ病を患う人々に新たな情報がもたらされる可能性があります。
2種類の新しいMRIスキャンは、うつ病患者の脳に見られる明らかな特徴を検出できるようです。

研究者は、この発見によりうつ病が脳に与える影響に関する知識が深まり、これによりより良い治療法に繋がるものであると述べています。

新しい種類のMRIの1つは、血液脳関門(BBB)の差を明らかにし、その他のMRIは、脳の複雑な接続ネットワークにおける差を強調しました。

近年科学者は、新型のMRI技術を、大うつ病性障害(MDD)を患う人、および患っていない人に対して使用しました。

調査結果に関するプレゼンテーションが、今週イリノイ州シカゴで行われる2019年度のRSNA、第105回目の北米放射線学会の年次総会において注目を浴びています。

世界保健機関(WHO)によると、世界中で2億6400万人もの人がうつ病を患っているといいます。


<うつ病とBBB>
うつ病とは、人が日々経験する悲しみを超えた症状です。
特に症状が持続すると、深刻な健康障害となることもあります。
最も深刻なうつ病になると、自殺を招くこともあります。

日々の活動への興味が無くなり、絶望感や脱力感を感じることが、MDDの主要な症状です。

科学者はMDDの症状には脳の変化が伴うことを理解していますが、根至急治療を改善する必要がある中で、底にあるメカニズムに関する理解は足りていません。

Kenneth T. Wengler博士は、ニューヨークにあるコロンビア大学心理学科の研究者です。
この研究の筆頭著者であるWengler博士は、MDDおよびBBBの変化における関連性を調べました。

「残念ながら」と、Wengler博士は言います。
「(MDDの)現状の治療では、再発リスクが高くなります。」

「新しい、より効果的な治療法を開発するため、私たちはこの疾患についてより良い理解を得る必要があります。」と、彼は付け加えています。

BBBとは脳内血管にみられる独特な一連の特徴であり、BBBと、BBBが関わる組織における分子や細胞の働きのコントロールに関わっています。

BBBは脳を、血流に入り込む可能性のある有害な毒素や病原から保護します。


<BBBの水分浸透性減少>
Wengler氏と彼の同僚達は、自分達が開発した新しい種類のMRIスキャンを使用しました。
この方法は「intrinsic diffusivity encoding of arterial labeled spins」もしくは「IDEALS」と呼ばれ、科学者によるBBB全体の水分の動きの調査を可能にします。

彼らは新しいMRIスキャンを使って、MDDを患う14人、および健康な14人の対象群におけるBBBを調べました。

被験者の脳スキャンにより、MDDを患う人はBBBの水分浸透性が減少していることが明らかになりました。
すなわち、血管から脳組織への水分移動速度が、健康的な対象群と比較して遅いことが判ったのです。

BBB水分浸透性における差は、特に2つの脳領域、扁桃体と海馬において顕著となりました。
過去のMDD患者におけるイメージング研究においても、これら2つの領域が強調されていました。

「私たちは、MDDによって変化することが知られている灰白質領域において、血液脳関門が崩壊していることを確認しました。」と、Wengler氏は説明しています。


<コネクトームの崩壊>
2つ目の研究では、科学者がコネクトームと呼ばれる、もしくはもしくは「脳内の完全な、ポイントツーポイントの、神経経路の空間接続」の崩壊を調査しました。

MDDと関連したコネクトームが調査されたこれまでの研究では、脳領域における接続に注目する傾向にありました。

この新しいは、脳領域内のコネクトームについてより綿密な調査を行う点において異なっていました。

Guoshi Li博士はノースカロライナ大学チャペルヒル校医学部Image Display, Enhancement, and Analysis Groupの研究者であり、研究の筆頭著者を務めました。

Li氏と彼の同僚達は、磁気共鳴機能画像法(fMRI)と、multiscale neural model inversion frameworkと呼ばれる新しいツールを併用しました。
彼らは新しい方法を用いてMDDを患う66人の成人、および健康的な対照被験者66人のスキャンを実施しました。

この技術により、チームは大規模な脳活動に関連する微小回路の活動を調査することができました。
彼らは脳細胞の回路にける興奮と抑制を分析しました。
健康な脳は、興奮と抑制のバランスがとれている時に最も機能が良好となります。

このfMRIスキャン結果では、MDDを患う人には、MDDのない対照群と比較して、背外側前頭前野における興奮と抑制の異なるパターンが見られました。

背外側前頭前野とは、自制や感情を制御する脳の領域です。
この機能には、扁桃体の制御も含まれます。
科学者は長年、脳が偏桃体を適切に抑制できないと、うつ症状が起こることがあると考えてきました。

「私たちの研究では、」とLi氏は言います。
「実行機能や感情制御を握る脳領域の興奮と抑制が、MDD患者において減少したことを発見しました。」

「よって、MDD患者はコントロール機能が損なわれており、これが偏桃体反応の上昇につながり、結果的に不安やその他負の感情を増幅させていることを示唆しています。」と、彼は付け加えました。

研究者はまた、感情制御に関わる別の脳領域である視床が、MDD患者では興奮を頻繁に繰り返す傾向にあることを見出しました。

Li氏は、この新たな発見は、うつ病のより深い脳接続の特徴を推測する上で役に立つと述べています。
彼は、これまでは「接続の表面的な理解」しか得られていなかったと説明します。

Guoshi Li博士は以下のように述べています。
「この手法により、各脳領域内での接続不全を特定することが可能になり、脳疾患の神経メカニズムを研究、およびより効果的な診断法および治療法の開発における強力なツールとなる可能性があります。」

2019年度のRSNAプログラムでは、以下の通り、この2つの研究に関する以下の詳細が記載されています。この情報は、査読済み科学雑誌ではまだ記載されていません。

2019年12月4日水曜日のSSM19-05セッションでは、「Blood-Brain Barrier Water Permeability Disruption in Major Depressive Disorder(大うつ病性障害における血液脳関門の水分浸透性崩壊
)」の発表が行われました。

2019年12月3日火曜日のSSJ19-04セッションでは、「Multiscale Modeling of Intra-Regional and Inter-Regional Connectivities and Their Alterations in Major Depressive Disorder(領域内および領域間接続のマルチスケールモデリングおよび大うつ病性障害における変化)」の発表が行われました。

出典: 2019年12月4更新 Medical News Today『New MRI scans reveal brain features of depression』(2019年12月9日に利用)
https://www.medicalnewstoday.com/articles/327220.php#6