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新薬の試験は治療抵抗性てんかんに希望を与える

19歳のシャナハン・ダメラル君(シャニー君)は生まれて初めてガールフレンドができました。
間もなく、彼は高校を卒業し、キトサップ半島で仕事を探します。 多くの人にとって日常的に思われることが、シャナハン君のように治療抵抗性、
もしくは難治性てんかんを患っている子供たちにとっては一大事なのです。

あまり知られていませんが、この種のてんかんを持つ子供たちは、複数の薬物治療を受け、脳の患部を切除する手術を受けているにもかかわらず、
幼児期で発見された場合でも大人になっても症状が持続します。

5歳の時にてんかんと診断された、シャナハン君の人生には常に発作がついてまわりました。
彼は16歳の誕生日のすぐ後に、2回目の脳外科手術を受けてもその後に発作が再発し、彼の母親であるリンリー・アレンさんは医学の進歩を
願いました。

「別の手術というのは問題外だったため、私たちは何か他の治療方法を見つける必要がありました。」
とアレンさんは言いました。
「より深刻な発作症状のために薬が研究されているという話を聞きました。私たちがその時に知っていた情報はそれだけでしたが、
私はそれがシャニーのようなタイプのてんかん発作を治療するために使われるかもしれないという希望を持ち続けました。」

そして、昨年、シャナハン君の長年の主治医であるシアトルチルドレンズ病院の神経内科医ラッセル・サネト博士は、シアトルチルドレンズで治療を行っている
難治性てんかん患者のためのNabラパマイシン(ABI-009)として知られる実験療法の第1相試験の実施について家族に話しました。

「サネト先生はシャニーの発作を治療するためのより良い方法を常に探してきました。そして彼は、この試験が研究プロセスの初期段階だと説明した後でさえも、シャニーはすぐに見を乗り出していつ始まるのかと尋ねました。」
とアレンさんは言います。  
「私はシャニーに、「それは数年後なのかもしれないわよ。」と言ったところ、サネト先生からは、「いいえ、来月から始めることができます。」
と言われ驚きました。」  

てんかん発作とともに生きる  
シアトル子供病院の脳神経外科医、ジェイソン・ハウプトマン博士によると、制御不能、または難治性てんかんは、手術を受けた子供たちの約半分で発作の発現が続きます。

手術で子供のてんかんが治癒できない場合、他の治療選択肢はほとんどないため、医師や家族は既存の抗てんかん薬で発作を管理するのが
最善策となります。  

シアトルチルドレンズ病院神経科学センター、および臨床トランスレーショナルリサーチセンターのハウプトマン博士、
サネト博士と研究グループの共同で、難治性てんかん(RaSuRE)のためのNab-ラパマイシン試験は始まり、
それは、手術後1ヶ月以内に8回以上の発作を起こし続ける難治性てんかんの子供のための、新しい、潜在的によりターゲットを絞った治療法の調査がなされました。

アメリカでは、この種のてんかん発作の小児に対する新しい治療法の開発に焦点を当てた研究は他にはほとんどありません。
ハウプトマン博士が指摘するように、効果的な治療法を特定することが、急務であり手術後にも発作を止めることができない多くの子供にとって、
それは、生死に関わる問題です。

「それは、最後から二番目の治療を受けている子供たち、つまりてんかんを治癒させることを目的とした手術を受けても、
まだ発作を起こしている子供たちに何をするのかという問題です。」  
「これらの子供たちの生活は困難であるだけでなく、毎年その発作が診察されないままになるとより深刻な状態になります。」  

てんかんにおいてmTORを標的に
バイオ医薬品会社であるAadi Bioscience社によって開発されたNab-ラパマイシンは、多くの小児脳障害に関与する過活性タンパク質であるmTORを標的とするように作られています。

「このタンパク質は、体のほぼすべての細胞に存在し、細胞の成長と機能を調節するのに不可欠です。」
とハウプトマン博士は述べました。
「それは脳細胞においても重要な機能を持っているので、mTOR異常が、我々が治療する多くのてんかんの共通の原因となることがあります。」

既存の抗てんかん薬と組み合わせて考えると、Nab-ラパマイシンがmTORの活性を低下させることによって発作の重症度を低下させることが
期待されます。
 Nab-ラパマイシンに類似した別のmTOR阻害薬は、結節性硬化症複合体(TSC)と呼ばれる発作性疾患を安全に治療することができるため、
処方薬として使用されてきました。

この薬剤は、mTOR経路の機能亢進を引き起こすことが知られている遺伝子変異を標的とすることにより、TSCの子供の発作を改善しています。
「この試験の目的の1つは、研究室を超えてmTORに関する私たちの広大な知識を広げ、比較的安全な薬を使用し、
てんかん治療ではより広い範囲となる「難治性てんかん」を改善する新しい方法を考えることです。」  

研究はベンチからベッドサイドへ
シアトルチルドレン病院で確認された関連研究の発見と相まって、必要な前臨床データを生成するための寛大な社会的な支援は、
『RaSuRE臨床試験』の推進を助けました。

シアトル子供研究所の研究者であるゲイダ・マーザ博士は、神経発達障害の遺伝的原因について研究しています。
統合脳研究センターに所属するマーザ博士と博士の研究グループは、mTORタンパク質を産生する遺伝子の突然変異による小児の脳障害について、追跡しました。

「私たちの仕事を通じて、難治性てんかんの子供の脳組織に存在する遺伝的変化を見つけることができました。」
と、マーザ博士は言います。
「これらの遺伝的変化のほとんどは、mTOR経路の活性化を引き起こします。したがって、この経路の阻害剤を使用することは、
非常に有効な治療方法ですので、難治性てんかんの小児を対象とした臨床試験で、研究チームが新たな可能性のある治療法を見つけることを期待しています。」

マーザ博士は、将来的に、急速に知識が広がり、現在開発中の革新的な研究モデルにより、臨床医が患者個人に合わせた治療を行うようになり、
さらに臨床試験に最適な候補薬の選択に貢献できると期待しています。

臨床試験でmTORを標的とする薬剤を最初にテストすることで、臨床医がどの薬が最も多くの子供に最も大きな効果が見られるのかを特定し、
他の治療薬と組み合わせたときの効果をも予測することができます。

マーザ博士が率いるこの治療法は、サネト博士や他の臨床医が、治療困難とされるてんかん発作の「アキレス腱」を標的とする治療方法として
患者である子供たち個々に合わせることができます。

「子供によって異なる遺伝的変異がたくさんあるので、どちらの子供もmTOR変異を持っていたとしても、
ある子供に有効な治療法は他の子供には効果がないかもしれません。」
とマーザ博士は述べました。

「実験室で神経細胞培養の遺伝的変異をモデル化できるようになることは、子供たちにとって最善の治療計画を決めることに役立ちます。
そしてこれは大きな前進です。」  

私は100%彼にこの薬を服用させたい
RaSuRE試験の参加者として、シャナハン君はシアトルチルドレン病院で、週に3回、Nab-ラパマイシンの注入を受けました。
彼は処方された他の5つの薬剤も服用し続けました。

シャナハン君と彼の母親は、彼が5ヶ月間の研究期間中に起こったあらゆる発作について記録しました。

RaSuRE試験の主な目的はNab-ラパマイシンの安全性と忍容性を評価することであり、それがてんかん発作の抑制に関連があるかどうかを
判断するためには、更なる試験が必要とされています。

「私は100%、彼にこの薬を処方してほしいと思っています。」 とアレンさんは言います。  

「私が確認した最大の出来事は、彼の発作が短くなり、後遺症が目立たなかったことです。」

シャナハン君を含めた、3歳〜26歳までの子供18人に、この研究の第一段階のひとつとしてNab-ラパマイシンが投与されています。

研究者らは、この試験の結果が、今後2、3年以内にシアトルチルドレンズ病院を飛び超えた子供たちに届くような大規模な多施設共同研究に役立つことを期待しています。  
シャナハン君とアレンさんは、既にNab-ラパマイシンの追加試験への参加する機会を望んでいます。

アレンさんは彼らの話を共有することによって、今後の臨床試験を加速するために必要な重要な資金と、子供のてんかんの根本治療を目的とした
精密な治療法の開発を支援するような団体組織にも参加してもらいたいと願っています。

「これらの試験が行われなければ、子供たちがてんかんの治療に役立つものを見つけることはできません。」
と彼女は言いました。

「子供たちが活動的になり、それが生活の一部になるような、より良い治療法を見つける必要があります。」
それまで、特に、彼女の息子の状態の治療が手の届くところに来るまで彼女は希望を持ち続けます。
そして同時に、彼女の息子の将来に希望も持てるのです。

「来年、彼が高校を卒業すると仕事に就くことができます。仕事をしたいとは思ってもてんかんがあるために雇ってもらえるかどうか心配です。」
「彼は、私たちみんながそうであるように、社会に貢献しようとしている素晴らしい若者です。私の願いはこれらの臨床試験がそれを実現するための
役に立つということです。」

他の治療法の選択肢がほとんどまたは全くない複雑な神経障害を持つ子供たちにとって、
研究結果を生活の中で使える治療法に変えるという進歩は、新たな希望や治療薬をも生み出すことがでます。
それこそが、シアトルチルドレンズ病院が行っているキャンペーン活動なのです。  

【以下のウェブサイトより引用】
https://pulse.seattlechildrens.org/new-drug-trial-gives-hope-for-treatment-resistant-epilepsy/