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研究により肥満が脂肪組織内部で複雑な炎症反応を引き起こすことが判明

脂肪組織は、悪者とされてきた一方で、エネルギー貯蔵やホルモン生成などの機能に関与している大変複雑で不可欠な身体の器官です。

しかし、現代のライフスタイルにより、肥満が世界的に蔓延しており、それに伴い2型糖尿病や心血管疾患といった肥満関連疾患もまた増加しています。

研究者らは、特に特に肥満に関連する炎症、脂肪の蓄積と健康状態の悪化との関係を解き明かすことを目標に脂肪組織の構造の基礎の解明について研究を行っています。

ミシガン大学のリンジー・ミュア博士、そして、博士候補者クーパー・スタンズベリー氏らによる新しい研究では、空間トランスクリプトーム解析(Spatial Transcriptomics) と遺伝子発現の単一細胞分析を組み合わせたものを使用して、これまで認識されていなかった免疫細胞の種類と脂肪組織内の相互作用を明らかにしています。

空間トランスクリプトーム解析とは、組織の薄い部分全体にわたる小さなスポットにおけるすべての遺伝子発現を捕捉する新しい技術です。

「脂質関連マクロファージ系統は初期肥満における脂肪組織の空間的景観を再配線する(A lipid-associated macrophage lineage rewires the spatial landscape of adipose tissue in early obesity)」と題されたこの研究は、JCI Insight に掲載されました。

脂肪の研究は「言うは易く行うは難し」なのです。

例えば、脊髄や脳など、定義された層に組織化されている組織について、

計算医学およびバイオインフォマティクス学科の博士号を取得した研究助教授である ミュア博士は、次のように述べています。

「データの健全性チェックを行って特定する方が簡単なのです。
この層またはその層を特定の細胞型として調べると、それが遺伝子 X、Y、および Z を発現しているはずであることがわかります。」

「脂肪の場合、細胞層が定義されておらず、細胞種が組織全体に均一に分布しているため、それはさらに困難です。」
とミュア博士は続けました。

肥満においては、脂肪細胞が膨張し、限界に達し、最終的には細胞死を引き起こし、炎症を引き起こす可能性があります。

脂肪組織内の免疫細胞の種類と、肥満における免疫細胞の相互の位置関係をより深く理解するために、研究チームは14週間にわたってマウスに高脂肪食を与え、脂肪組織を収集し、単細胞分析と空間分析を使用し、サンプル中に存在するすべての mRNA を読み取りました。

単一細胞データの「クラスタリング(clustering)」として知られる計算プロセスを使用して、他のグループやサンプル全体よりも遺伝子構造が互いによく似ている細胞をグループ化することができました。

彼らは、死んだ細胞や破片を除去するのが仕事の免疫細胞である「マクロファージ」のサンプルの集団について驚くべきことを発見しました。

「マクロファージには複数のサブタイプがある可能性が高いことはわかっていましたが、私たちが驚いたのは、結果として得られた数値が互いに大きく異なり、異なる時期に出現し、時間の経過とともにより優勢になったことです。」
とミュア博士は説明しました。

彼らは マクロファージの5 つのサブタイプを特定し、Mac1、2、3、4、および 5 と名付けました。

Mac1 は、通常のエサが与えられた痩せたマウスと肥満のマウスの両方の組織に常在していました。

Mac2とMac3 は炎症誘発性遺伝子によって特定され、高脂肪食を 8 週間摂取した後にピークに達しました。

しかし、高脂肪食が14週間まで進むと、炎症誘発性遺伝子の発現が低いMac4細胞とMac5細胞が優勢になる一方、炎症誘発性のMac2細胞とMac3細胞は減少しました。

「この分野では、肥満に蓄積するマクロファージの一種が炎症状態を促進していると考えられてきました。

これらのデータに基づくとこの話にはさらに多くのことが隠されています。」

とミュア博士は述べました。

彼女の仮説ではMac4 とMac5 は彼女自身の以前の研究や他の研究者によって記載されている脂質関連マクロファージ (LAM) であり、炎症誘発性マクロファージや死にかけている脂肪細胞による有害なレベルの炎症を鎮めようとする身体の兆候である可能性があるというものです。

次に、新鮮な凍結脂肪組織を丹念に切片化することで、チームは 空間トランスクリプトーム解析による分析を実行できるようになりました。

空間法の各分析スポットには、そのスポットの上部にある組織内の mRNA に結合する固有のバーコードがあるため、後でバーコードを座標として使用して遺伝子発現を組織内の特定の位置に配置できます。

この方法では、mRNA を収集する直前に切片も画像化されます。

この研究では、これらの画像を調べて、クラウン状構造(インスリン抵抗性に関連する構造)と呼ばれる明らかなマーカーを探しました。

「一度王冠のような構造が現れると、それらが消えるまでには長い時間がかかり、その出現は組織の機能不全を示します。

画像処理を使用して、これらの領域の密度に基づき、王冠のような構造である可能性が高いものを特定し、それらが目視できることを確認しました。」

とミュア博士は述べました。

これらの構造には、Mac4 およびMac5 LAM の存在を示す遺伝子発現がありました。

肥満に関連した脂肪組織の細胞構成と空間構成についてのさらなる洞察が得られたら、次のステップではLAM と代謝障害の発症に関連するシグナル伝達プロセスとタンパク質を調査するとミュア博士は述べました。



【以下のリンクより引用】

Obesity leads to a complex inflammatory response inside fat tissue, study finds

Medical Xpress

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